この記録は、2019年にパラグアイで開催されたFIFAビーチサッカーワールドカップを観戦するために南米を旅していたとき、リアルタイムでスマホに打ち込んでいた備忘録です。
予想外のトラブル続出で、正直「もう無理かも…」と思ったことも何度もありました。でも、心に残ったのは数々の“優しさ”でした。
文章は当時の臨場感を残しつつ、読みやすく整えています。旅やサッカーが好きな方はもちろん、海外一人旅のリアルを知りたい方にも読んでもらえたら嬉しいです。
プロローグ:W杯を追いかけて。リオから始まった南米の旅
2019年11月、私は南米へと旅立ちました。目的は、パラグアイで開催されるFIFAビーチサッカーワールドカップの現地観戦。
まず降り立ったのはブラジル・リオデジャネイロ。というのも、大会に出場する日本代表が、リオで事前合宿を行っていたからです。その姿をこの目で見届けたくて、旅のスタート地点にリオを選びました。
そこから陸路でアルゼンチン、そしてパラグアイへと向かう長旅。
…ところが、リオに到着して早々、スーツケースが行方不明になるというハプニング発生。
ここから、まさかの“サバイバル旅”が始まりました。
第1章:スーツケースが来ない
14日、リオ到着。空港のロストバゲージカウンターで確認すると、「荷物はリマ(ペルー)にある」とのこと。
「明日か、遅くとも2日後には届くだろう」と高をくくっていたのですが…待てど暮らせど届かない。
18日の朝には、リオを出てアルゼンチンへ向かう予定。なんとしてでもそれまでには受け取りたい。
航空会社に何度も問い合わせ、ようやく返ってきた返答がこちら:
「荷物は17日にサンパウロに到着し、18日にリオに届く予定です」
……いやいや、私18日にはもうリオにいないんですけど!? オワタ orz
第2章:現金が下ろせない…宿にたどり着くまでの新たな壁
仕方なく、次の滞在先であるアルゼンチンのホテルに荷物を転送してもらうよう依頼。
無事に住所確認も済み、リオからバスで26時間かけてプエルトイグアスへ。
ここでの宿は現金払いのみということは、事前にわかっていた。
なので、バスターミナルに着いてすぐにATMへ直行。
――が、お金が出てこない。
所持金はほぼゼロ。絶望的。
予約した宿に行き、事情を説明。スタッフは親身に対応してくれ、特別にクレジットカード支払いを許可してくれたのですが…
カードを通すと、まさかのエラー。
チーン。さっきのATMで磁気がイカれた…?
スタッフは「ブラジルレアルでも、米ドルでも、アルゼンチンペソでもなんでもOK」と言ってくれたけど、手元のありったけをかき集めても、わずかに足りない。
泣きそうになりながら「もう今日は野宿します」と伝えると、再度ボスに相談してくれ、
「今ある現金だけでいいよ」と特別にディスカウント。(※脅したわけじゃありません)
神様…ありがとう。優しさが身に沁みる。
海外でクレジットカードが使えない状況ほど恐ろしいものはない。
部屋に通され、ベッドに倒れ込みながら天を仰ぐ。
(大丈夫。スーツケースさえ届けば、現金も予備のカードもある。)
――と、そんな悪状況にトドメを刺すかのような連絡が航空会社から届く。
「あなたのスーツケースは税関審査の関係で、アルゼンチンには送れません。
イグアスの滝国際空港(ブラジル)まで取りに来てください。」
OH MY GOOOOOOOOD!!!!
いやいや、今バスの切符すら買えないんですけど!?
マジで終わった。
私が行きたいのはイグアスの滝であって、”イグアスの滝国際空港”じゃないんだよぉぉぉぉ。
この瞬間、頭の中は「どうやって空港まで行くか」一色に。
第3章:ATM再挑戦と、800ペソの突破口
翌朝。スタッフのひとりが声をかけてくれた。
「バスターミナルでクレジットカードが使えるかもしれないよ。もう一度試してみたら?」
その言葉を信じて、再びバスターミナルへ。 しかし、窓口で言われたのは、
「ローカルバスは現金のみです」
……ですよね。
もうW杯無理だ…と肩を落としていると、窓口のお姉さんがポツリ。
「国際キャッシュカードでATMから引き出せるの、800ペソが上限って知ってる?」
それだ!! 最後の望みを託して再度ATMに向かう。今度は少額で入力してみると……
出たー!!!!涙
すぐにブラジル行きの往復バスチケットを購入し、昨日出国したばかりのブラジルへ再入国。そして空港へと向かう。
そして、ついに――スーツケースと感動の再会。中には、日本代表のユニフォームと応援グッズ。すべて無事。
ちゃんちゃん。となれば良かったのですが、まだ続きがあります。
第4章:バス乗り間違え&無賃乗車の危機
帰りのバスで、なんと乗り間違え。
運転手のおじさんに「バスターミナルに行きますか?」と確認もしたのに、バスが動き出してしばらくした頃、チケットもぎりのお姉さんが
「これは違うバスよ」
…え? もう出発してますけど?
「運賃を払ってください」と言われるが、ここはブラジル側。今持っているのはアルゼンチンペソのみ。
無賃乗車扱いで降ろされる?警察沙汰?頭の中は大パニック。
そんな私の横で、ひとりの見ず知らずのおばさまが、私の運賃を代わりに支払ってくれた。
ここにも神が。
第5章:置いてけぼりの国境と、汗だくの坂道
その後、無事にアルゼンチンへ再入国し、宿にお礼を伝えてから、ようやくパラグアイ行きのバスに乗車。
アルゼンチン→ブラジル→パラグアイという経路をたどるため、何度も国境越え。
気づけばパスポートにはこの2日間で、ブラジルのスタンプ3つ、アルゼンチンのスタンプ4つ。
イミグレ職員に不審がられつつも、事情を話して無事通過。
イエローカードの確認もなく、荷物検査もない。
あっけなく入国審査が終わり、建物の外に出ると…
乗っていたバスがいない。
ガーン!置いてかれた!!
1時間後のバスも、目の前でスルー。意味不明。もう限界。歩いてバスターミナルへ。
……地図ではわからなかったけど、かなりの坂道。歩きを選んだことを全力で後悔。
汗ダラダラになりながら、ようやく到着。
第6章:ようやく、W杯の地へ
現在、シウダーデルエステのバスターミナルで深夜0:05発のアスンシオン行きバスを待ちながら、この記録を綴っています。
どうか、無事に日本代表を応援できますように。
アスンシオンまであと少し!

おわりに:困難の先に待っていた、最高の舞台
笑えるぐらいトラブル続きでしたが、振り返ると、この旅で出会ったのは「トラブル」よりも「人の優しさ」でした。
現金が下ろせなくても泊めてくれた宿。バスの運賃を肩代わりしてくれた見知らぬ人。
思い通りにいかないことだらけでしたが、それ以上に「人ってあったかいな」と思えた時間でもありました。
そしてこのあと――ようやくたどり着いたアスンシオンで、日本代表の勇姿を目にすることになります。
その感動は、また別の記事で。